世界の富豪列伝 - 富豪のマネー哲学に学べ!

歴史に名を残した世界の富豪たちは皆、独自の人生観とマネー哲学を持っていました。時代を超えて通用する彼らの叡智に学びましょう。

第6回 アンドリュー・カーネギー
成功への階段を国民のために作った大富豪

2008年8月13日
アンドリュー・カーネギー

利益を社会と分け合った大富豪

19世紀後半、アメリカ合衆国は南北戦争の混乱から立ち直り、大国として急成長していました。鉄道網が全国を結び、機械化があまねく進み、投機熱に浮かれ、農業国から工業国へとまい進していたのです。精神的価値よりもお金が大手を振るう「金メッキ時代」の勢いにのって、おおぜいの大富豪が現れました。なかでも鉄鋼王と呼ばれたアンドリュー・カーネギーは、石油王ロックフェラー、金融王モルガン、鉱山王グッゲンハイムらとともに、まさに時代の「王」として君臨していました。

富豪たちは、国家の庇護のもと、「強盗貴族」とそしられるほどの強引さで富を独占し、下層の労働者や農民は貧困にあえいでいました。カーネギーはそんな王たちのなかでも、投機などのギャンブル的な方法ではなく、汗を流して富を築き、築いた富をさまざまな分野に分配したことでは抜きん出た存在でした。

イギリスを抜いて世界一の経済大国になっていく激動の時代に、アメリカでは物質的豊かさを求める拝金主義が、助け合いや信仰といった開拓時代の伝統を破壊していました。自分の利益のために他人を蹴落とすことが当たり前だったそんな時代に、巨大な成功を得たアンドリュー・カーネギーは、彼の人生を輝かしいものにする『成功の黄金率』を活用しました。つまり、産業技術の改良で労働者の労働時間を短くしたり、奨学金や大学など、貧しい人びともチャンスを得られるような場を作ることで社会のすべての人に、利益を分け与えたのでした。

アメリカン・ドリーム

カーネギーは1835年、スコットランドの麻織物の中心地、ダンファームリンで生まれました。当時は産業革命のまっただなかでしたが、手織り工の父親は手動から蒸気へという技術革新に乗り遅れ、カーネギー家の経済は大打撃を受けます。

1848年、一家は新天地アメリカへ渡ることを決意、以後、カーネギーは学校教育を受けることはありませんでしたが、独学で読書を続け、のちには自らの思想を語る文筆活動にも勤しむようになるのです。ピッツバーグ綿織工場で週給1ドル20セントの糸巻きの仕事に就いたアメリカでの最初の生活は、ただ家計を助けているということだけを慰めに、長い労働時間と退屈な仕事に耐える日々でした。

転機は二年後にやってきました。地下室の工場を出て、電信局の電報配達員になるチャンスを得たのです。この仕事を通じて得た技術的知識、そして何よりも大きく広がった交友関係が彼の人生を一変させます。17歳で通信技師に昇進。18歳のとき、ほとんど所持金がなかったにもかかわらず、銀行を説き伏せ借金をして鉄道会社への投資話に乗ります。父を亡くしたばかりの貧しい移民の青年の一世一代の賭けでした。

ビジネスの世界に飛び込んだ彼は、さらにあるとき、木橋火災による鉄道事故を知り、これからは木ではなく鉄鋼の時代だと思い立って友人と一緒に小さな鉄鋼会社を作ります。このように、ありふれた事件からも時代の先を読む才覚で、鉄鋼から石油へと事業を進ませ、まさにアメリカ経済と歩を共にするような展開で事業を飛躍的に拡大させました。

そして1889年に設立したカーネギー製綱会社の成功で、ついに「鉄鋼王」の名を冠せられるまでになったのです。

「富の活用と分配は富める者の義務」という哲学

アメリカの鉄鋼生産の25パーセントを所有する大富豪となったカーネギーも、実は、自分の利益を第一に追求する「強盗貴族」の一人でした。けれども54歳で実業家人生の集大成である『富の福音』を執筆したことで、「金持ちのまま死ぬのは不名誉なことだ」と気づいたのです。そして「富の蓄積よりもはるかに難しく重大な任務」として後半生の大事業と定めた「富の分配」に取りかかりました。

手始めに、ニューヨーク市への公共図書館の分館(68施設・625万ドル)を寄贈。続いてワシントン市に学問・技術・芸術などへの支援協力団体、カーネギー協会を創設(1000万ドル+1500万ドル)。さらに、1911年にはニューヨークにカーネギー財団を設立するための1億2500万ドル、アメリカとイギリスに1700近くの図書館を贈り、現在は国連の国際司法裁判所となっているオランダ・ハーグの平和殿堂建設資金寄贈のほか、生涯を通じて、3億5000万ドル以上を、文字通り、富の分配事業に投じました。

「事業に成功して富を蓄積し、人生を全うしたとしても、蓄積した富を運用する責任を放棄して、その責任を第三者に押しつけてこの世を去るようでは、富の活用の責任を全うし、富める者としての当然の義務を果たしたとはいえない」というのが、晩年の彼の矜持となりました。

とはいえ、その慈善は、ただ貧しい人々に富を分け与えるようなものではありませんでした。「富豪の援助が社会にもっとも役立つ分野は、奨学金制度のように、人々が高いところに上る足場を作ることである」というように、彼は「アメリカン・ドリーム」そのものの支援者となったのです。

未来を見据えたローン利用を考えましょう

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[参考文献]
アンドリュー・カーネギー『カーネギー自伝』(中公文庫)
アンドリュー・カーネギー『私の履歴書』(騎虎書房)
アンドリュー・カーネギー『富の福音』(騎虎書房)

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