世界の富豪列伝 - 富豪のマネー哲学に学べ!

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第4回 タタ一族
急成長を続けるインド経済を牽引する老舗財閥・タタ

2008年6月18日
タタ一族 ── 急成長を続けるインド経済を牽引する老舗財閥・タタ

2050年にはアメリカを凌駕する経済大国になるインド

サブプライム問題の影響もほとんどなく、順調な拡大を続けるBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)。その中でも、インドの成長は、世界経済のけん引役になっています。アメリカの投資会社ゴールドマンサックスの予測によれば、インドの実質GDP成長率は2020年まで8%を持続。GDPは現在の4倍となり、このまま成長が続けば2050年までには米国を追い越すとされています。 1990年代に急成長したIT産業のイメージがこれまで強かったインドですが、現在はグローバリゼーションの利点を最大限に活かし、重工業分野の成長にも目を見張るものがあります。

タタ・グループは、そのインドの最老舗財閥で、現在、IT、金融、不動産、電力、鉄鋼、自動車から食料品までも網羅する7分野98社を擁し、従業員数24万6000人、株式時価総額は約800億ドル、総売り上げはインドのGDPの3パーセント強に及ぶ219億ドルになっています。

インド建国に貢献した創業者・ジャムシェトジーの理念

タタ・グループの始まりは、1868年にジャムシェトジー・タタが設立した貿易会社です。カーストに組み込まれないゾロアスター教徒で英国留学も経験し、民主的な哲学をもつジャムシェトジーは、イギリスの植民地という制約だらけの困難な状況のなか、独立運動家とも親交しながら、インド人のためのインドを作り上げてゆきます。 

たとえばある日、ヨーロッパ人の友人と外資系ホテルに食事に行ったジャムシェトジーは、「インド人お断り」と入場を拒まれました。彼はインドの現実に心を痛め、「この国にインド人のための世界一贅沢なホテルを作る」と決意し、実現しました。その構想には、製鉄所、水力発電所の設立、理工系高等教育機関の創設までが含まれ、20世紀初頭には長男のドラーブジーが遺志を継ぐことになります。

グループの株式の過半数を所有するタタ・サンズを通じた慈善事業は現在も幅広く行われ、農村の教育、保険・医療サービス、奨学金貸与、マイクロ・ファイナンス等を通じ、インド社会に貢献しています。

社会的責任と国際競争力強化の志が生んだ、10万ルピー車『ナノ』

現在の5代目会長であるラタン・タタは、創業者の遠縁にあたります。1962年、アメリカ留学で工学を修めたラタンは、IBMの内定を断ってタタ・グループの製鉄部門に入社。現場でたたき上げたあと、グループ内の業績の悪い部門を任され、再建に成功するなどキャリアを積みます。

1991年、インドの経済はそれまでの計画経済から自由経済に移行。グループの会長に就任したラタンは、グループの再編と事業の見直しによって、またたく間にグローバル経済の中心に躍り出ました。

2008年1月に発表された超低価格乗用車『ナノ』(約28万円)は世界に衝撃を与え、「不可能といわれ続けたことを可能にした」というラタンのスピーチは、多くの人の感動を呼んだのでした。『ナノ』は、インドの若者や新中間層がバイクから買い換えて家族で利用するための車として開発されました。この開発の成功は、インドの人々の生活改善だけでなく、自国への誇りを再認識する契機となりました。

慈善事業とこのような開発によって、ラタン・タタはインドでもっとも尊敬される経営者といわれています。

理念を持ち、長期的展望をもった構想が功を奏す

古い文明を持つ大国でありながら、15世紀から長く植民地だったインドは、20世紀に入ってもなお、古い風習と貧困の代名詞的な存在でもありました。世界中に感動と希望を与えた独立運動のあと、大きな国はなかなか貧困を克服することはできませんでした。 そんな中、タタ財閥では、アジアで初めて一日8時間労働を実現したり、労働者への無料医療サービスを実施したりと、単なる労働契約だけではなく、従業員の生活自体を見すえた経営を続けてきました。

また、経済自由化以降は、インド国内での競争ではなく、徹底してグローバルな視点での経営が行われてきました。先進国の労働者にとっては痛みとなるグローバリゼーションも、インドのような国の人びとにとっては大きな飛躍のチャンスとなったのです。 しかし、激動する世界経済に飛び込んだいまも、タタは創業者が目指した社会貢献への精神を受け継いでいます。ラタンは米国流の経営とは一線を画した次のような考えを持っています。 「米国の場合、経営者は短期的な業績にこだわり、長期的な成長や発展に関心が薄くなる。まだ多数の貧困者がいるインドでは、大企業の社会的責任と経営者のモラルが問われているのです」。

[参考文献]
小島眞『タタ財閥―躍進インドを牽引する巨大企業グループ』(東洋経済新報社)

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